津山の米搗き水車

以前小ネタ【現役で働く水車】で津山市内で現役で稼働している水上げ水車をご紹介しましたが、津山市にはもうひとつ、今も残されている水車があります。
前述の水車は水田へ水を汲み上げる水車でしたが、今回ご紹介するのは米搗き水車(こめつきすいしゃ)です。
かつては集落内共同で使用していた米搗き水車が田舎のあちこちにあったのだそうですが、時代の流れで次々と姿を消していき、津山市ではこの水車が唯一残されている米搗き水車で、水車小屋の傍らに一本の桐の木が立っていたことから「桐の木水車(きりのきすいしゃ)」と呼ばれています。

この水車は昭和11年に造られたもので、地区の12名の水車連中(共有者)によって運営されていました。
長年の風雪による痛みや台風被害で壊れたり、水車連中の減少もあり維持が困難になっていたのですが、平成元年に『津山の農村風景のシンボルとして維持し、次代に伝えていきたい』と、「美作の自然と文化を守る会」の支援を受けて多くの募金協力を得て修理を行い、トタン葺だった屋根を昔ながらの茅葺屋根に改修しています。


修理が完了したその年の秋、水車連中の方々が獲れたての新米をこの水車で搗いてオニギリを作って募金をしてくれた人達に振る舞ったのだそうです。
水車で搗いた米を食べたことのない募金者の方の感想があります。
「お米の味がこんなに香ばしくて“味がある”と思ったのははじめて。お米の味だけでお茶碗数杯分食べてしまえそうなくらい美味しい。」
ちょっと大げさな表現のように聞こえるかもしれませんが、なぜそれほどに美味しく感じられたのでしょうか。
単に新米だったからとか、自然豊かな田舎の屋外での食事だったからという理由もあるでしょうが、普段食べているお米との一番の違いは何でしょうか。
近代的な精米機を使って米を搗くと摩擦により米が結構な熱を持ちます。しかしこの昔ながらの方法で時間をかけて精米すると米が熱を持ちません。そのため熱による米の質が変化することが無いからなのではないでしょうか。
しかも水の力を動力にしているので電気やガソリンなどは不要、風情があるだけでなくメリットも結構あるんですね。
“水車で搗いた、美味しい水車米”としてお米を売りだせば、いい町おこしになるかもしれません。

桐の木水車
岡山県津山市勝部地内 【地図】
スポンサーサイト
コメント: